作りこんだ定款は経費を減らす
効率的に事業を拡大していきたいなら、会社の基本規則となる定款作りに時間を割くことをおすすめします。会社設立時に必要というだけでなく、経費を節減し、トラブルに対する防波堤にもなります。3つの形式を通して、定款の中身を見ていきましょう。
「絶対的記載事項」
必須掲載事項で、これを欠くと、定款は効力を持ちません。
会社の目的
何が出来る会社なのかを理解してもらうための項目です。登記後は、取引先も含めて誰もが自由に閲覧できる状態になります。専門用語はやさしい言葉に置き換えるなど、分かりやすい表現を心がけてください。
商号
会社名を指します。
本店所在地
本店を置く住所です。〇〇市△△区までに留めておけば、同じ区内で移転する場合は定款を変更しなくて済みます。
設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
出資される財産の価額は、設立時に会社にあるお金や財産。最低額は、設立の際、会社にあるお金や財産の最低額です。最低額に決まりはありませんので、考え方の例を挙げます。
例:「5人出資者がいて、うち2人はそれぞれ1000万円を出資する。のこり3人は調整中だ」という場合、最低額は2000万円です。
発起人の氏名または名称および住所
設立を呼び掛けた代表者の氏名・名称、住所です。
項目には含まれませんが、「発行可能株式総数」も明記する必要があります。これは、最大でこのくらいは発行できますよ、という株式の数です。株式譲渡制限があるかどうかによって、上限数は異なります。
「相対的記載事項」
必須項目ではありませんが、記載が無いとその内容は法的効力を発揮しません。出資金に絡む項目も多いため、加えておきましょう。
現物出資
車や不動産など、お金以外の出資です。
財産引受
会社が成立した際に、出資者等から財産を譲り受けるという契約を発起人が結ぶことです。実店舗を譲られ、ふたを開ければ大規模な補修工事が必要だった、などの不利益を回避するための項目です。目的財産(対象となる財産)、価格、譲渡人の氏名がある場合にかぎり効力が認められます。
設立費用
会社設立のために、発起人が支払ってきたお金は本来、会社の経費です。立て替え金額の証明として記録しておきましょう。
設立時の取締役や監査役の氏名
設立時に在籍している各役員の氏名です。
取締役会や会計参与・監査役などを置く旨
取締役会を設置するかしないかによって、会計参与・監査役を置くかどうかも決まります。
役員任期の伸長
役員の法定任期は2年です。選任から10期目にあたる年度の最終定時株主総会が終了するまで、任期を伸ばすことができます。
役員の責任の減免に関する定め
取締役への損害賠償責任は原則、全株主の同意がなければ避けられません。しかし、「もし株主代表訴訟で高額な損害賠償を請求されたら」と経営陣が委縮して、売上額が横ばいでは本末転倒です。この項目で、責任を一定範囲で減免する方法を定められます。
・株主総会の招集期間の短縮
取締役会を置いているかどうか、株式譲渡に制限があるかどうかにもよりますが、株主総会招集期間を短縮することができます。
「任意的記載事項」
記載したから効力を発揮するものではありませんが、ルールとして決めておくことをおすすめします。
- 定時株主総会の召集時期
- 取締役・監査役の数
- 株主総会の議長
- 事業年度に関する規定
成立した定款を変更するには、変更対象項目にもよりますが、最低1万円からの登録免許税が必要です。作りこんだ定款が経費を減らす、という意味、お分かりいただけたでしょうか。